施工事例

ラジエータ内のクーラントが三分の一ほど減り、リザーブタンクがほぼ満水の状態で入庫して来た平成7年式のアルトワークス RS/Z。
ラジエータ内の状態から、エンジンの圧縮圧力の漏れと同時に水温上昇による沸騰も発生している様な感じ。
そこで、ラジエータの性能を見極めるべく、サブラジエータを止めサーモスタットを外した状態で、装着品と在庫品の気泡誕生の違いを比較してみました。

その時の映像はこちら！
https://youtu.be/dJobCt1HRmo


ほとんど差が無い様に見えるので問題無いとは思いますが、圧縮漏れの原因が高ブーストであるなら、もっと明確に抜けている症状が出ても不思議ではないため、他の可能性として冷却系統が怪しいのでは？
という私の見解でした。




油センサーが後付けされているので、ある程度の滲みは仕方のない事ですが、水回りの点検をしているアイドリング中でも、工場の床に落ちるほど漏れているのは、さすがに限度を超えているので。一度洗浄して確認してみました。

動画はこちら！
https://youtu.be/rm7GbwOgqng


後はエンジンを降ろす前に確認しておきたい圧縮圧力と燃圧、ついでに油圧を測定しておきます。



先ずは1番。
11㌔ちょっとなので正常値です。






続いて2番。
こちらも11.5㌔位なので正常値。






最後に3番。
こちらも11.8㌔あたりなので正常値。
気筒間差もほぼ無しなのでエンジンの圧縮圧力は特に問題ありません。
圧縮漏れはしていてもエンジン始動前は全く症状が起きていない様です。

大体、今回の現象は私的にも初体験なので、とても不思議な現象です。
通常、圧縮漏れを起こしたヘッドガスケットは、冷間時でも吹き抜けているので、エンジン始動直後から気泡誕生が始まるモノ。
更に吹き抜けているので燃焼室へクーラントが浸入し、混合気と共に燃焼されるので、クーラントは減っていくモノ。

この当たり前の現象である2点が全く起きていない時点で、ヘッドガスケットは抜けていないはずなのですが、リザーブタンクに吹き返すほどの圧力。
更に吹き返したクーラントが戻る事さえ出来ないほどの空気量。

冷却不足による沸騰も想像しましたが、在庫品のラジエータに交換し気泡は減った様に見受けられましたが、誕生はしていたのでその線も消滅・・・

明確に原因が分からないモノは対応が難しいです。
ヘッドガスケットを交換し、仮に直ったとしても改善してあげないと、また同じ現象が起こる可能性が高いからです。

外的な要因である冷却状態、内的な要因である燃焼状態。
この2点を軸に改善出来るポイントを考え実行する事が大切です。




続いて燃焼状態に関わりの深い燃圧です。
ここでも見た事のない現象が起きました。


映像はこちら！
https://youtu.be/eCP5FxNKJvk





フューエルホースがこんな感じだったので、ホースの劣化によるモノとも想像しましたが、滲みはおろか特有の臭いも全く無かったので、その辺りは問題無かったと判断しています。
動画内でも言っている様に、普通に走行出来ているので問題はない様にも感じますが、もしポンプのリリーフバルブがバカになっている様だと、必要以上に頑張ってしまっていると想像出来るので、発生する熱量も高くなり寿命はもちろん、気化熱の性能にも影響が出てしまう様に感じます。



燃圧自体は純正よりも高そうなので、お客さまの言う通りエスクード用の可能性が高いです。



最後は油圧です。
映像はこちら！
https://youtu.be/JvHrRSuDWxw





4000rpmで300kpa以上が正常値なので、アイドリング時でこの数値なら油圧は問題無さそうです。


どこかで書いたかも知れませんが、一番難しいのは部品を交換する事ではなく、原因を特定する事です。
部品を交換するだけで良いのか？
何かしらの改善が必要なのか？

依頼された通りガスケットを交換したが症状が変わらなかった時の事を考えると、依頼されていない事だとしても、ある程度は原因を把握しておく必要があります。
今回はその判断が難しい症状だった事もあり、必要以上にエンジン回りの状態を調べる事になってしまいましたが、把握出来た事で分解せずとも歪みは無く、強化されたガスケットを純正の規定トルクよりも高トルクで締め付けを指定されている事で、良いイメージがない前期型K6Aが良いエンジンへと改善されるイメージを持つことが出来る様になった事が、ここまでの作業による成果です。

私自身が納得出来る様になるための作業とも言えます。

次回は、エンジンを降ろしガスケットを交換していきます。