施工事例

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2024.09.30

赤いセルボモード

MT化に必要なモノ

ヤシマ号も元は4WDの3AT。
十年以上前に製作し何回も車検を取得して来ましたが、前回の車検で初めてMT化を指摘され改造申請を実施。

MT化に必要なモノの一つ目は改造申請書類です。

書類審査があるので、車検の時では間に合いません。
最低でも2ヶ月前、余裕を持って3ヶ月前には書類を提出しておきたいです。

セルボにはSR-TというF6Aシングルカムターボの4WD/5MTが存在しています。
この類別型式と同一となるので、荷重計算等で頭を使う必要はありません。
整備書の諸元表には記載されていない項目も何点かあるので、メーカーから取り寄せる必要がありますが、今ならネット検索で出て来そうな勢いですよね(笑)

それでは作業をスタートします。

AT用のセレクトレバーは写真の様に室外からも見る事が出来ます。
FFのMTも同じように室外からも見えますが4WDのMTは室内で完結しているので、空いた穴を塞ぐことが必要です。





エンジンを降ろすタイミングで発見された腐食穴。
前回のリヤサイドメンバー同様に補修が必要ですが、今回は第一段階が最優先なので、放置しておきます。



当方へやって来た当時からサビが酷かったので、乗られていたお客さまが降りたら廃車にする予定だったのですが、まさかこれほど永く乗り継がれるとは想像もしていませんでした。



今のお客さまは10年以上前にハイの修理をお受けしてからのお付き合い。
この時に出した代車が今回のセルボモードだったお話はどこかでした様な・・・



エンジンが降りました!
タービンとECUは64馬力になったC系最終のFリミテッド用!
Mセレクションのシートや内張りに変更しスズスポの足を導入等、サビが酷いにも関わらず私自身が乗るために手を入れた理由はターボ付き4WDのATで雪を走ってみたかったから?(笑)


ステアリングラックもO/Hかリビルト品に交換しても良い位にガタが発生しています。ここも第二段階でお預かりする時に作業する予定です。

そのステアリングラックの上に見えるのがシフトワイやー。


4WDのMT用のシフトワイヤーもココを通過しているので無加工でイケます。



オルタネータは数年前に交換済み。
セルモーターも交換推奨部品となって来ました。


続いて室内。

MT化に必要なモノ、二つ目がクラッチペダル。
MT用はブレーキペダルとセットになっています。



3点目がクラッチワイヤー。
4WD用が販売終了しているので購入可能なFF用を選択。
不具合の有無を点検していく必要があります。


そのクラッチワイヤーの装着部は、穴こそ開いていませんが形状は残されているので比較的スムーズに装着可能です。

ベースとなるMT車があれば型紙を作れるのでよりスムーズに作業出来ます。





クラッチワイヤー装着。


4点目がギヤシフトコントロールレバー。
AT用のセレクトレバーから変更するだけですが、冒頭でも述べた様に空いた穴を塞ぐ必要があります、



4WDのMT用はブラケット自体にワイヤーを固定する様になっているのですが、ATは写真の様にブラケットではなくボデーに固定するためのブラケットがスポット溶接されているので、これも外す必要があります。





5点目がシフトワイヤー。

両端のブッシュも第二段階以降のどこかで製作予定です。


シフトワイヤーも無事装着。



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六点目がミッションASSY。
七点目がラジエータパイプ。
八点目がパイプ先に装着されているホース、
九点目がフロント用のエンジンマウント。

ラジエータパイプとホースはATとMTでは全然別モノです、反対側にはラジエータのロアホースが装着されます、正反対の位置にあるためラジエータもAT用とMT用が存在しています。
またミッションの下に見えるメンバーに装着されているフロント用エンジンマウントですが、こちらもAT用とMT用が存在しています。


10点目がクラッチカバー。
11点目がクラッチディスク。
12点目がフライホイール。

フライホイールは販売終了しています。メタル系のクラッチディスクは攻撃力があるのでクロモリ等のフライホイールと組み合わせてあげないと、純正のフライホイールでは持ちません。


ATミッションとMTミッション。

圧倒的にATミッションの方が重たいので軽量化にも貢献します。


リングギヤを外してフライホイールを装着します。



ボルトはAT/MT共通です。






クラッチ2点はほぼ新品の在庫品。


新品を組むと横から見てカバーの板バネがほぼまっ平らなのが特徴です。
クラッチディスク等の摩耗によって、ペダル「クラッチワイヤー」の遊びが無くなって来る。つまり調整ネジを緩める方向へ回すのは、この板バネが反り上がりレリーズベアリングに近づいて来るからです。
装着前の板バネが反り上がっている様に、クラッチカバーボルトを締め付ける事で得ていた圧着力が、クラッチディスク等の摩耗によって厚みが減少する事で、段々と元の状態に戻る「圧着力が低下する」仕組みです。

またレリーズベアリングの摺動部はクラッチペダルを踏む行為とイコールなので、ゴリゴリ感等の足に伝わる違和感の原因に繋がります。
ミッションケースの一部である摺動部は部品で言うならミッションケースASSY!
もはや普通に交換出来るレベルの部品ではないので、少しでも違和感を感じたらO/Hすることをおススメします。


ATと刻まれたフロント用エンジンマウントの写真が出て来ました。

これなら分かり易いのですが・・・


13点目がクラッチレリースベアリング。



七点目のラジエータパイプ。

こちらも販売終了しています。


13点目のベアリングも装着。

第二段階以降のどこかで再び分解し予防整備の実施、試乗期間中に異音等の不具合が出る様ならその改善も実施します。
当方で用意した部品はミッションに関わらず全て当方に責任があります。
ここがお客さま自身で持ち込まれた部品との大きな違いです。
ギヤ鳴きやシフト抜けなど試乗しないと判断出来ない不具合が起こる可能性が残る在庫品は、とりあえず形にする事が最優先事項です。
予防整備は初期不良を把握してからでも遅くはありません。
LSDの装着も視野に入れているので現状の把握は更に重要です。



10/3


14点目はリヤのエンジンマウント。

フロントの様にATとは刻まれていませんが明らかに大きさが違います。
しかし大きさが違うと判断出来るのはMT用と比較しているから。
現物確認出来ない時は品番から確認するのも一つの手です。
フロントが違えばリヤも違うであろうと想像出来ますが、それを確定させる術が必要な作業でもあります。


マウント類は新品で購入出来るモノと出来ないモノがあるので、どこかのタイミングでモンスタースポーツの強化品に変更予定です。


AT用のフロント側エンジンマウント。



こちらがMT用のフロント側エンジンマウント。
見比べると別物なのが分かります。


14点目のリヤエンジンマウントが装着されているブラケット。
15点目はリヤエンジンマウントブラケットです。



左がAT用で右が4WDのMT用。


ボルト穴が追加されているだけでなく全体的に立派な姿に・・・





エンジンマウントも立派です。


見比べる事が出来れば明確に違いが分かります。



ミッションのココにブラケットがボルトで固定されるだけ?なので、AT用のブラケットでも装着は可能です。
実際に何度かこの手の改造を施されたアルトの中にも、AT用のままで組まれた仕様を見た事がありますが、強度的にこちらの方が安心感があります。



MT用のフロントエンジンマウントへ無事に変更。


16点目がリヤトルクストッパ。

ほとんどの車が写真の様に切れています。AT車両には装着されていない事からも、MT車両の駆動力は半端ないというコトに(笑)
エンジンの力をどのくらい有効に使っているかの伝達率もMT車がズバ抜けていた記憶があります。
ただブラケットの装着部分がダッシュパネルに直付けなので、フロアパネルに不快な振動が直に伝わる事を嫌ったのか、恐ろしい程の柔らかさ⁉
本当にこの部品が役割を果たしているのか疑問は感じています(笑)




17点目がそのブラケット。
ATには存在していない部品なので、固定するボルト穴も当然開いていません。
が、クラッチワイヤ同様に形状は残されているので何とかなります。



18点目がミッションマウンチングブラケット&ブッシュ。
トルクストッパはブラケットにブッシュが圧入された状態で一つの部品でしたが、
ミッションマウントは別々に品番が存在します。
AT用のマウントとは別物なのでMT様に変更します。


19点目がそのブラケット。

ボルトも違いますが、そのあたりはセットという形でお願いします。


最初は「点目」ではなく「つ目」だったのですね(笑)
二つ目で紹介したクラッチペダルの登場です。

AT用のブレーキスイッチはシフトソレノイドを動かすための配線があるからか、カプラ形状がMT用とは違うため再使用します。



ペダルも無事に?装着。



エンジン&MTミッションも無事に搭載。


ロングな分、本来とは違う取り回しのクラッチワイヤー。
最善は尽くしたので経過が楽しみです。


空いた穴は樹脂で塞ぎました。




ミッションマウンンチングブラケットも無事に装着。



リヤトルクストッパブラケットを装着させるための穴をマーキング。


そして20点目がドライブシャフト。
デフギヤにハマる部分がAT用よりもMT用の方が若干ですが長いのです。
AT用ではCリングが完全ロックの位置まで刺さらないので注意が必要です。

また、インナー側のジョイント方式も違いますが、大半のMT車にも採用されている
のでここでは省略します。



21点目がラジエータ。
22点目がロアホース。

左がAT用で右がMT用。
ファンとロアホース形状からK6A用だと判断出来ます。
当方が在庫しているラジエータの大半はK6A用です。
F6Aと違いサビで詰まるなんて事が無いからです、
K6A用のラジエータが詰まるのは漏れ止め剤等、人が何かしたモノだけです。

ラジエータだけでなくファンモーターと羽根まで新品に交換してありました。
もちろんモーターと羽根は再使用します。



いずれはホースだけでなくラジエータもSPに交換したいところです。


バックスイッチ用のハーネスをATハーネスから暫定的にGET!

これでヤシマ同様、バックに入れるとMTなのにピーピー音が聞こえてきます(笑)


続く。

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